Morganite Pink Beryl

モルガナイト — 桜色をまとう、4月の新しい誕生石

エメラルドやアクアマリンと同じベリルから生まれる、やわらかなピンクの宝石。 桜を思わせる穏やかな色合いから、愛と癒しを象徴する宝石として親しまれています。

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モルガナイト(ピンクベリル)のペアシェイプ・ルース

金融王の名を持つ桜色

「モルガナイト」という名は、20世紀初頭に活躍した 米国の金融家であり、熱心な宝石収集家でもあったJ.P.モルガンに由来するとされています。 1910年、マダガスカルでローズベリルの豊かな新産地が見いだされたことを受け、 ティファニーの宝石学者ジョージ・F・クンツが同年12月に ニューヨーク科学アカデミーでこの名称を提案したと伝えられています。 それまで、この石は単に「ピンクベリル」と呼ばれていました。

愛と癒しを宿すとされる、
やわらかなピンクのベリル。

4月の新しい誕生石

2021年12月、全国宝石卸商協同組合により63年ぶりに日本の誕生石が改訂され、 モルガナイトが4月の誕生石としてダイヤモンドと並んで加わりました。 桜を思わせるやわらかな色合いであること、そして命名の由来となった モルガンが4月生まれだったことが、その理由とされています。

20世紀初頭

米国カリフォルニアで、トルマリンとともに淡いピンク色のベリルが見いだされたとされ、これが最初期の記録の一つとされています(年代には諸説あります)。

1910年

マダガスカルでローズベリルの豊かな新産地が発見されます。この発見が、のちの命名提案のきっかけとなりました。

1910年12月

ジョージ・F・クンツがニューヨーク科学アカデミーで「モルガナイト」の名を提案。芸術と科学を支援し、博物館へ宝石を寄贈したJ.P.モルガンに敬意を表した命名とされています。

1911年〜

マダガスカルで本格的な産出が始まったとされ、「モルガナイト」の名が宝石界に定着していきました。

桜から夕日へ、ピンクの諧調

モルガナイトの色はピンクを基調に、ローズ、ピーチ、サーモン、 オレンジがかったピンクまで幅があるとされています。 彩度の高い濃いピンクは比較的少なく、淡くやわらかな色合いが多いことも特徴です。 また、淡いピンクとやや濃い青みがかったピンクという多色性をもつため、 美しい色を引き出すには研磨時に原石の向きを慎重に選ぶ必要があるとされています。

ローズピンク

Rose Pink

人気の色域

ソフトピンク(桜色)

Soft Pink

代表的な色

ピーチピンク

Peach

未処理に多い

サーモン

Salmon

温かみのある色

ビビッドピンク

Vivid Pink

濃色は希少

ペグマタイトが育む、大きな結晶

モルガナイトは、地中深くでマグマが結晶化する最終段階に形成される 「ペグマタイト」と呼ばれる岩石の中で育つとされ、 ときに数キロを超える大きな結晶が見つかることでも知られています。 現在流通する多くはブラジル産で、近年はアフリカ圏も重要な供給源になってきているとされます。

現在の主要産地

01

ブラジル

Minas Gerais, Brazil

流通量が多い 大型結晶 ペグマタイト

市場に出回るモルガナイトの多くは、ミナスジェライス州のペグマタイト鉱山産とされます。 大きな結晶が産出されることでも知られ、 アクアマリンと同じ結晶の中に共存する例もあるとされます。

色の基準とされる産地

02

マダガスカル

Madagascar

理想色とされる 最初期の産地 現在は少量

1910年代に最初に注目された産地で、現在の産出量は少ないとされます。 しかし、ここで見いだされた鮮やかなマゼンタ系の原石は、 今もモルガナイトの色の基準とされ、特別な評価を受けています。

近年の注目産地

03

モザンビーク

Alto Ligonha, Mozambique

近年存在感 サーモン〜ピンク 良質な産出

アフリカ東部に位置するモザンビークは、良質なモルガナイトの産地として近年注目が高まっています。 サーモンピンクからピュアなピンクまで幅のある色が産出されるとされ、 そのほかアフガニスタン・ナミビア・米国なども産地として知られています。

マンガンが灯す
やわらかなピンク

モルガナイトは、エメラルドやアクアマリンと同じ 「ベリル」(ベリリウム・アルミニウム珪酸塩、Be₃Al₂Si₆O₁₈)という鉱物の一種です。 ベリルは純粋な状態では無色で、その色は結晶に取り込まれた ごく微量の元素によって生まれるとされています。

モルガナイトのピンクは、微量のマンガン(Mn²⁺)によるものとされています。 ベリルは取り込む元素やその含有量のわずかな違いによって、 ピンクからオレンジを帯びた色まで幅広く変化するとされます。 鉄が加わると黄みやオレンジ味が強まり、ピーチやサーモンの色合いになると考えられています。

※ かつてセシウムが発色に関わるとする説も見られましたが、 セシウムは発色には関与しないと考えられています。
参考:GIA「Morganite」ほか

発色・組成に関わる主要元素

Mn
マンガン(Manganese)
モルガナイトの発色源とされる。Mn²⁺としてベリルに取り込まれると、やわらかなピンクの色味をもたらすと考えられている。
Fe
鉄(Iron)
混在すると黄〜オレンジ味をもたらすとされ、マンガンによるピンクと重なって、ピーチやサーモンの色合いを生むと考えられている。
Be
ベリリウム(Beryllium)
ベリルという鉱物名の由来となる主要構成元素。エメラルド・アクアマリンとも共通する、ベリル族の骨格をなす。
Al
アルミニウム(Aluminium)
ベリルの基本構造を形成する元素。上記の微量元素は、この結晶構造に入り込む形で発色に関わるとされる。

鉱物データ

鉱物種:ベリル(緑柱石 / Beryl)
化学式:Be₃Al₂Si₆O₁₈
硬度:モース 7.5〜8
屈折率:約 1.57〜1.60
比重:約 2.71〜2.90

ピンクを整える処理

モルガナイトには、業界で広く受け入れられている処理があります。 いずれも色をより純粋なピンクへ整えることを目的としたもので、 適切に開示される限り、一般的な手法とされています。 購入時には、鑑別書とともに処理の内容を確認することをお勧めします。

照射処理

Irradiation

一般的

流通するモルガナイトの多くは、放射線による照射処理で色を整えているとされます。 オレンジやイエローの色味を抑え、純粋なピンクを引き立てる効果があるとされ、 得られた色は安定的とされています。 自然界の放射線でも同様の色変化が起こりうるため、 人為的な処理か自然のものかを科学的に区別するのは難しいとされ、 鑑別書には「通常、照射処理が行われています」と記載されることが一般的です。

加熱処理

Heat Treatment

一般的

ピーチやイエローがかった色味を取り除き、 より純粋なピンクへ整える目的で加熱が行われることがあるとされます。 こうして得られた色は安定的で、退色しにくいとされています。 照射処理と組み合わせて行われる場合もあるとされます。

※ モルガナイトは一般に処理が施される宝石とされ、 照射の有無によって価値が大きく変わるものではないとされています。 色を整える照射処理は、近年では放射性を帯びるリスクの少ない 電子線による方法へと移ってきています。 また、適切に管理された施設で処理され、残留放射線量が人体に影響しないレベルであることが 確認された個体のみが流通しており、通常の着用において懸念はないとされています。 ごく一部に合成モルガナイトも存在するとされますが、鑑別機関の検査で天然石と判別できます。

主要鑑別機関

モルガナイトの鑑別では、鉱物種(ベリル)の同定、 処理(照射・加熱)の有無の記載、天然か合成かの判別などが確認されます。 色の評価軸が中心となるルビーやサファイアとは異なり、 モルガナイトでは「正しい名称」と「処理の開示」が特に大切とされています。

GIA

Gemological Institute of America(米国)

国際的な基準 名称の指針 研究機関として著名

世界最大規模の宝石学機関。 「ピンクエメラルド」という呼称は誤解を招くとして認めず、 この石は「モルガナイト」または「ピンクベリル」と呼ぶべきとの立場をとっています。 合成石の判別など、研究機関としての知見でも国際的に知られています。

CGL

中央宝石研究所(日本)

日本最大手 処理の記載 日本語証明書

日本国内で最も流通実績のある鑑別機関の一つ。 モルガナイトについては、その性質から 「通常、照射処理が行われています」といった記載がなされることがあります。 日本語での鑑別書発行が可能で、国内での購入・取引で確認しやすい機関です。

GRS

GemResearch Swisslab(スイス)

国際的な信頼性 処理の記載 カラーストーン専門

スイスを拠点とするカラーストーン専門の鑑別機関。 モルガナイトでは鉱物種の同定と処理の有無の確認が 主な鑑別内容となり、国際的な取引で参照されることがあります。 日本国内では欧州系ラボの中では比較的認知されています。

※ 鑑別書は石の性質・処理状態に関する専門機関の見解を示すものです。価値の保証を意味するものではなく、鑑別機関により判定方法・表記が異なる場合があります。購入の際は複数の情報を参照されることをお勧めします。

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